- 「ラルフィリア・サーガ外伝2 河の果ての楽園」 感想(ネタバレ) -


「ラルフィリア・サーガ」外伝の感想です
ネタバレしてますので要注意!




「電撃hp Volume5」掲載の外伝小説。ベルナロッサが子供の頃の話で、ベルナロッサの叔母にあたる女性ナタールカと、彼女の護衛戦士(ガーディア・ソル)アークの愛を描いた話です。


一応ベルナロッサが主人公のポジションですが、ナタールカが主人公といってもいいくらい(助けられながら)活躍しています。
ナタールカは「芯が強い」って言葉がぴったりあてはまる女性です。
ベルナロッサには落ち着いた叔母として振舞っていても、アークに対してはけっこうあたふたする様子も随所で見せていて、そんなところが可愛いです。
アークと初めて言葉を交わした日以来、ずっと告げることのない想いを育んできたという一途さと純情さも持ち合わせていて、とても健気なお姫様で好感もてました。
一時は己に課せられた王女としての運命を受け入れようとしていましたが、ザジュヴールから自分を助けたアークの姿を見て彼への想いを改めて自覚し、運命を変えようと、アークを助けて駆け落ちを決意するなど、情熱的な一面も持っています。

アークも、ザジュヴールをナタールカから守り、「ルカを害するものは、たとえそれが神だったとしても俺の敵だ!」と身分差をものともせずに言い放つなど、ナタールカを誰よりも大事に思っている様子が伝わってきます。自分の信念と想いに従ってナタールカを守る場面や、ナタールカと会話を交わす場面はどれも必見。

こういう人たちこそ幸せになってほしいものですが、そうはいかないのが有里紅良先生作品の特徴でもあったりします。
逃亡中、ナタールカがアークにお菓子を作ってあげると約束する場面は、最後の場面を思うと涙…。
サジュヴールに追いつめられたナタールカが自分にはすでに永劫を誓った夫(アーク)がいると言って、自らアークと共に死を選ぶ場面はもう涙もの。

結局、ナタールカとアークは河の向こう(死の世界)に旅立つことで、ようやく二人は誰にも邪魔されずに一緒にいられるようになったわけです。
ナタールカとアークの存在はベルナロッサに多大な影響を与えたわけで、やはりこの悲しさを感じさせる結末が、「ラルフィリア・サーガ」をはじめとする、有里紅良先生の作品の特色なんでしょう。


悪役ポジションのザジュヴールは、大変ふてぶてしい悪役ぶりを発揮しています。
現在、同人誌として発売中されている「ラルフィリア・サーガ外伝 魔馨の渓谷」では、ザジュヴールが今までの悪行の報いを受けて失脚する様子が描かれてますが、この外伝が発表された時点では、ザジュヴールは何の報いも受けることなく終わっていたので、当時納得できなかった人は大勢いると思います。
納得できなかった人は必ず「ラルフィリア・サーガ外伝 魔馨の渓谷」を読みましょう。


この外伝には、ベルナロッサの兄弟である、第五王子ティリアンや第六王子ディーンも登場。
兄の第一王子サーザは今回会話の中にしか登場しませんが、病弱の身で色々な術(精霊召還と占星風水術)を駆使して地下洞窟の地図を作成して、駆け落ちを助けていたことが語られていて、ここでも完璧超人ぶりを発揮しています。

ティリアンもいたずら好きでやんちゃな弟ぶりを発揮してて、読んでて微笑ましいです。
何故王子が自分を助けようとするのか困惑するアークに、ティリアンが「俺もルカが好きだし、それ以上にザジ叔父(サジュヴール)が大嫌いなんだ」とにっこりして言ったり、「じゃあな、幸せ者!ルカを大事にしろよ!!」とませた言葉と共にナタールカとアークを見送る場面がお気に入りです。


ベルナロッサは少年時代からしっかりしていて、王子なのに料理もこなしてナタールカに差し入れをもってくるなど、昔から完璧ぶりを発揮してますので、ベルナロッサファンも必読。
1巻で出ていた「食事は基本」というベルナロッサ(ティラン)のポリシーもさりげなく出ていて、1巻を読んだ人なら思わずにやりとしてしまう場面も…。
最後、青年になり国王として即位したベルナロッサが、逝ってしまったナタールカとアークを思う場面がとても印象的な終わり方でした。


ちなみにこの外伝が掲載された「電撃hp Volume5」は、今でも駿河屋やAmazonやヤフオク!でよく見かけるので、今からでも中古本として買うことは可能です。興味がわいた方はぜひ読んでみてください。

余談ですが、「電撃hp Volume5」の表紙は結城信輝先生描きおろしイラストのユーリで、とても美麗なので必見です。



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