- 「緋翔伝〜幾千の月のかけら〜」 感想(ネタバレ) -


「緋翔伝〜幾千の月のかけら〜」の感想です
ネタバレしてますので要注意!




「ラルフィリア・サーガ」にリンクしている?作品ということで、この漫画の感想です。


夢来鳥先生の漫画を初めて読んだのは「物の怪らんちき戦争」で、次に読んだのが「戦国ソーサリアン」、この「緋翔伝〜幾千の月のかけら〜」はコンプやガオを読んでいた縁で読んでました。

「物の怪らんちき戦争」のコメディ+シリアスな作風が印象強かったので(後半はめちゃくちゃシリアスなんですが)、「緋翔伝〜幾千の月のかけら〜」は前述2作品のシリアスで重い部分が濃縮されて溢れてた雰囲気で、最初は読むのが辛かったです。

特に序盤(1巻〜2巻)は読む人を選びますね。主人公夏木くんの理不尽な扱いが読んでて痛いこと痛いこと…。しかも瑞穂は前世の記憶を覚えてなく(心の底では覚えているのですが)、さらにただの人間のため、夏木を見る事も彼の声を聞く事もできない。恋愛するにはなんとも無理がありすぎるシビアな設定。
まあこの過程があるからこそ、中盤から後半までの感動があるわけですが。

夏木くんの瑞穂だけを一途に想い続ける姿は本当に健気で、それゆえに恋人を守るためとはいえ人を殺め続けた罪を背負って鬼にされてしまった経緯は本当に哀れです。
んでもって、どうしても「同じ人殺しの綱は何故普通に人間として転生して安穏と暮らしてるのか」と思わずにはいられないのですよ。
正義をかさにきた人殺しと恋人を守るための人殺し。どっちも人殺しには違いないわけで…。むしろ悪質なのは綱たち。それを思うとやりきれないのです。
ラストでは勧善懲悪ものみたいに一応因果応報になってたので、この点はすっきりします。

瑞穂ちゃんも夏木に負けず劣らず健気で、夏木の存在を知った(思い出した)後、「夏木さん以外の誰にもお嫁に行かない」と宣言し、夏木のお嫁さんとして勇樹の家に来る姿は本当に可愛くていじらしくて…。
夏木と瑞穂の相思相愛ぶりは、読んでてにんまりするほどほほえましいので必見です。

また序盤と後半で夏木と瑞穂の恋愛の最大の障害として立ちはだかる瑞穂パパ。
瑞穂パパの娘を守りたい一心からの行動。それが行き過ぎて、自分の同族を夏木をハメる卑劣な罠に利用するために殺して娘を守ろうとしたところは、今で言うモンスター親ぶりでドン引きしました。憎まれ役としては成功してると思うのですが、それでも…。

そういった理不尽な仕打ちを受けながらも、筋を通して瑞穂パパに頭を下げて「瑞穂を嫁にください」と頼む夏木くんの男気と、夏木に心を開いた瑞穂パパが今までのことを謝って「娘を頼む」と二人を祝福する場面は感動もの。

夏木と瑞穂は様々な試練を経て、瑞穂パパも自分を助けるために命をかけた夏木の真摯な思いにやっと二人の仲を認めて、二人は晴れて公認の仲になります。

人間と霊。通常は触れ合えない者同士。普通の恋愛関係ではないのですが、こういった恋人同士もありなのかなあと読み終えて思いました。
「バーチャコール」のプリシアや「きゃんきゃんバニーエクストラ」の弁財天スワティみたいに、愛の力や術で実体化して人間として暮らせるようになるとかしないかなあと今でも切に願います。もしくは「IZUMO」の精霊や悪霊のように触れ合えることもできる存在になるとか…。

過去にら・むうん畑で発行された同人誌で「夏木や」というのがありまして、内容が『瑞穂と夏木がようやく役を返し切って晴れて夫婦になり、念願だった食い処「夏木や」の開店準備に奮闘する』というものだったらしいので、もしかしてお互い触れ合えるような関係になったのでしょうか…?
この本自体、すでに絶版で入手困難なのですが、機会があれば再録本という形でぜひ再発行してもらいたいです。


またこの作品、美形キャラ人気もあったと思われます。白乱さんが一番人気っぽかったですね。
他にもショタボーイからおじ様までよりどりみどり(笑)。なので彼らをネタにする腐女子まっしぐらな勇樹&瑞穂を考えたこともありました(苦笑)。「現代の女の子の愛読書はこれなのよv」って夏木にデタラメ教えたり、誰が受けで誰が攻めかを二人で熱く論議してる漫画とかを(笑)。


ちなみに白乱がメインのエピソード「第六章 水泡の祈り」は、僕のお気に入り話の一つです。
普段クールな白乱が海皇に間違えられて呆気にとられた表情を見せる場面や、普段は物事を冷ややかに見ている白乱が「過去の絶望を越えるために私の召喚に応じたのではなかったのか」と主に諭されて、八百姫(やおひめ)のために大蛟を食い止めようとする場面、海皇と八百姫が再会できたのを見た主に「こういうこともたまにはないとな」と言われて白乱がかすかに微笑む場面など、読んでてにんまりする場面続出。
ラストは「あきらめなければ報われる」といった雰囲気がすごくよかったです。

んでもって、僕の好きなキャラはやっぱりユーリアス。3巻巻末小説で登場するユーリの設定や姿に一目惚れしました。神秘的で可愛らしいあのデザインはまさに萌えでした。
後半でユーリアスの意識が出てきたときの勇樹はすっかり別人になってましたが、「テイルズオブシンフォニア」の精霊マーテルみたいに、勇樹はユーリアスの中の一人にすぎないということなのでしょうか。


長々と書きましたが、試練を乗り越えて純愛を貫く夏木と瑞穂の姿と二人の相思相愛ぶりはとても素晴らしいので、転生ネタの純愛物語が好きな人はぜひ読んでみてください。



緋翔伝〜幾千の月のかけら〜(全巻)電子書籍版




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